コブダイ 目指せBIG ONE!編 (4)

2020年6月11日

壮絶な午前中の戦いを終えて昼を迎える。

昼食にはTさんが、カップラーメンを
差し入れてくれる。

暖かくなってきたとは言え、まだ肌寒くも
あるこの季節。
温かい食べ物は嬉しい。

何より、海を眺めながら食べるラーメンは
本当にウマイ。

荷物も増えるだろうに、本当にありがたい。
感謝です!

腹ごしらえも終え、午後の部がスタートする。

息子も午前中の激闘の話を聞き、
コブダイに本格参戦。

竿をじっと睨みつけるもアタリは無い。
そんなに都合よくコブダイは来てくれない。
海の生き物は忖度してくれないのだ。

2時間過ぎ14時半を過ぎた。

流石に午前中が出来過ぎだったのか。
息子も我慢しているが退屈そうだ。

ちょっと可哀想になる。

「無限スリットでガシラ釣ろうか?」

思わず僕から誘い、ガシラに遊んでもらいに
行くことにする。

いま、腰を据えているポイントから
無限スリットまで100mほど。
置き竿をTさんに託して釣り座を離れる。

僕たちの間にはルールがある。

置き竿をして、その場を離れた時にアタリが
来たら現場に残った人が竿を上げる。

竿の所有者が戻ってこれたらバトンタッチ。

無理なら現場に残った人が釣り上げ、
獲物も上げた人のもの。
ざっくりそんな感じ。

スリットに到着して、息子といざ糸を
垂らそうとしたその時。

何だか釣り座の方から声が聞こえたような
気がした。

「ん?」

と、何気なくそちらを見る。

すると竿を満月のように曲げたTさんが
こちらに向かって叫んでいる。

「来ましたよーーーーー!」

よく見ると僕のインターラインの磯竿だ。
Tさんが代わりに合わせてくれたらしい。

「ウソーーーーん!」
と息子とダッシュする。
久しぶりに全力で走る。
波止の釣り人が振り返るが、
気にしてられない。

あれ?
遠いぞ。。100m。。。
息子がどんどん小さくなって行く。。

喉の奥から込み上げてくるラーメンの味を
抑えつつ何とか釣り座に戻る。
さすがTさん、すでに底は切っているようだ。

僕を見ると
「代わりますわ!」
と竿を渡そうとするTさん。

いや、ここまできたらもう上げて貰おう。
「そのままあげてください!」
と、竿をTさんに託す。

最後の足掻きをするコブダイ。
しかし、ここまで浮かせば人間の勝ちだ。
竿のしなりを見た感じでは朝のモンスター
よりは小さそうだ。

一気にリフトアップするTさん。

コブダイが浮いてきた。
観念したのか一発でタモに収まる。

やった!

それでもデカいぞ。
サイズは50弱か?
兎に角、念願の今日の1匹目が拝めた。

•••こうなると、俄然、力が入る息子。

「何で僕だけアタリけーへんの?」

それが世間の厳しさと言うものだ、息子よ。
コブは忖度してくれないのだ。

もう無限スリットのガシラには目もくれず、
竿から離れない。

気持ちは痛いほど分かる。
あんな引きを見せつけられたら、もう
ガシラどころじゃない。
朝釣ったデカメバルの感動までも
消し飛んでいる。。

何とかあの引きを一度でいいから
味わわせてやりたい。
せめてもの援護射撃としてコマセを
撒いてやる。

時間は16時。
納竿まであと1時間。
朝のお祭り騒ぎが嘘のように沈黙した
時間が流れる。

それでも竿先を見つめ続ける息子。

•••その祈りがついにコブ神様に届く。

僕も自分の竿より息子の竿が気になり、
一緒に竿を見つめていた。
その竿先が、、、

ウトウトしていて机からずり落ちた肘のように

朝礼の最中、膝の後ろをカックンされたように

カラオケでこれからサビを歌おうとした時に
鳴る終了の電話のように



何の前触れもなく、一気に竿先が海に向かって
引き込まれる。

その速度、通常の魚の3倍のスピード。
間違いない!奴だ、奴がきたんだ。

「アワセろ!」

僕が叫ぶその前に、すでに息子は動いていた。

息子よ、もしかしてお前は
ニュータイプなのか?

力一杯合わせる息子。

ずっと竿を見つめていたのでタイミングは
申し分ない。

「きたーーーー!」

渾身の力でアワセを入れる息子。

•••ここで僕は今日2度目の信じられない
瞬間を目撃する。

「あがらへーーーーん!、、、、」

アワセを入れた中腰の状態から息子は
ピクリとも動けない。
そりゃそうだ、大のオトナが転がされる
引きなのだから(>_<)

それどころかさらに竿先はさらに海面
目指して突っ込んで行く。

「ヤバイ!」

そばで見ていた僕も慌てて加勢に加わる。

因みに息子のタックルはPE6号、
フロロ18号。
それに虫ヘッド6gを直結。
ちょっとやそっとで切られる代物ではない。

息子の竿の前に入り、右手で竿を持ち上げる。
が、、、止まらない。
絞り込まれる。。
マジか。
両手で竿を掴んで持ち上げる。

「ギューーーーーーーーーーーン」

コブも一向に諦める気配がない。

「観念せぃーーーー!」

息子と一緒に思いっきり力を込めて
引きあげたその時、すべての力が抜けた。

???

切れた!?
あの仕掛けが?
足元に根があった?
いや、根ズレしてた感じはなかったぞ?

頭の中は「?」だらけだ。

息子も呆然として仕掛けを回収する。

すると、信じられないものが上がってきたのだ。。。。!

左が通常の針 右が伸ばされた針

虫ヘッドの太軸の針が完全に
伸ばされていたのだ。

使っていたのは虫ヘッドの6g。
ペンチでもこれだけ曲げるのは大変である。

タンコブゲームには欠かせない虫ヘッド。
安心感ハンパない太軸なのに。。

コブの歯の部分に掛かっていたのだろうか。
変なテコが効いたのか。
信じられないが、目の前の現実に圧倒される。

兎に角、コブのパワーに脱帽するしかない
結果となった。

「コブ、すげー。メッチャ、スゲー!!」

興奮気味に呟き続ける息子。
仕掛けを回収した後も手と足が震え
続けている。

息子よ。
逃した魚はデカイというが、今回の獲物は
メガトン級にデカかったぞ。

結果は残念だったが、息子に一瞬でも
引きを味わせてくれたコブに感謝である。
このバラシは間違いなく、息子の次の
成長に繋がるだろう。

釣りはバラシてからが始まりだと
つくづく思う。

いよいよ夕まずめ。

まだだ、まだ終わらんよ。
最後のドラマに期待して、気合を入れ直す。